ある飛行機の中でのことです。
私は、ヨーロッパ国内を経由して、同じ飛行機に乗って成田に帰るところでした。
その経由地で、乗務員さんが全員入れ替わりました。
すると、アメリカ人のお客様に、一人の乗務員さんが、何か話していました。
どうやら、経由地から乗って来た方のようで、その方に救命胴衣や、酸素マスク等
のセキュリティーの説明をし始めました。
今では、みんなセキュリティーの説明は、ビデオテープで流されるので、イメージ
できないのではないかと思いますが、昔は、全てアナログ式でした。
乗務員さんたちは、実際には膨らまない救命胴衣やチューブの切れている酸素マスク
などの道具を使ってお客様たちに説明をしていました。
最初から乗っているお客様たちには、出発地で既に説明されているので、
セキュリティーの説明はされませんでした。
お客様は、再出発するまで何もすることがなく、ボーっとしているだけでした。
ですから、自然とみんなの視線は、その乗務員さんに向かっていました。
さて、どうやら、その乗務員さん、本当の新人さんだったようで、他の乗務員も全員、
遠くの方から見守っていました。
そのアメリカ人のお客様も、自分のためだけに説明をしてもらっていて、ちょっと照れた
感じでした。
酸素マスクの説明も、うまく行き、救命胴衣の説明に入っていました。
英語で
「ここを引っ張ると空気が入り、膨らみます。」
と動作をしたとき、遠くの方から見守っていた他の乗務員たちが、その新人さんの
乗務員に向かって、
「もっと、強く、きちんと引っ張れ!!」
とジェスチャー交えて言っていました。
その新人さん、ちょっと照れたように、もう一度、
「この紐を引っ張ると膨らみます。」
と言いました。
うまく行った感じでしたが、遠くから見守っていた乗務員の1人が、ツカツカとやってきて、
その新人さんの横に立ちました。
「訓練でやったでしょ。そんな簡単なジェスチャーで何が伝えられるの?真剣にやらなくちゃ!」
と言っていました。
アメリカ人のお客様に対しても、
「申し訳ございません。この乗務員は、新人なのです。どうぞ許してやってください!」
と謝って、
「場慣れさせる為にも、もう一度させたい。」
と言いました。
(あ~、救命胴衣等、セキュリティーの説明は、お客様、そして自分たちの命を守るもの。
本当に真剣にやっているのねぇ。)
と感心して見ておりました。
そして、その新人さん、3回目のデモンストレーションを始めました。
「この紐を強く引っ張ると・・・」
と、言われた通りに今度は、本当に強く、強く、引っ張りました。
プププシュ~~~~~~~
あらららら~、本当に膨らんじゃいました、救命胴衣が・・・。
見る見るうちに空気が入り、救命胴衣がパンパンに膨らんでしまいました。
新人さんは、アップアップしてしまいまして、バタバタ暴れてしまいました。
とても驚いていました、お客様も、新人さんも。
アメリカ人のお客様は、
「アイム・ソーリー」
と謝っていて、遠くで見守っていた乗務員たちは、大拍手をしていました。
そうです、新人への儀式だそうです。
初めてのフライトを迎えた新人にいたずらを仕掛けるのが、慣わしだそうで・・・。
本物の救命胴衣を用意して、デモンストレーションに使わせていました!
そう、そして、経由地から搭乗したと言うアメリカ人の方は、いたずらを仕掛ける
手伝いを頼まれたと言うことでした。
乗務員が全員入れ替わったので、どのお客様が、最初から乗ってきたかなんて
分からなかったのです。
一気に機内がゆる~い空気に包まれました。
当に今では信じられないくらい、和やかないい時代でした。
今日も読んでいただいてありがとうございました。

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